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今までにも何度か行って来たテーマであるが、今回はついにTrimble社の小型単独測位受信機PathfinderPocketの登場である。その他に国内で最もユーザの多いと思われるGARNIN 社の中から、過去の評価結果も良好であるGARNIN GPSV(ファイブ)、それに12月に訪問して来たばかりのSanJose Navigation社のGM48を加えて実験を試みた。比較的購入しやすい価格帯のハンディーGPS受信機であるが、今回の価格比較ではPathfinderPocetとGM48の間には最大5倍もの価格差がある。廉価なモバイルGIS位置センサーとして、またGPS入門機としての需要も増えてきているので、精度に関する関心も高い。多少の参考になればと思う。
<受信機メーカと機種>Trimble | Pathfinder Pocket |
Trimble | Pathfinder Pocket + MBX-3(CSI社):DGPS測位 |
GARNIN | GPS V(ファイブ) |
San Jose Navigation | GM48 |
測定は出来るだけ同じ条件で行うのが望ましい。このため2日間に分けた測定は、初日と2日目の測定開始時間を同じ時間帯とした。また複数の受信機を同じ測点で測定する方法として、屋外のGPS信号を屋内に再放射する、SanJose Navigation社のリ・ラディエーションアンテナを使用した。
本来は屋外で行うべき実験であるが、数m精度の単独測位受信機の相対的比較であれば、その影響は小さいと判断した。合わせて、この時期の旭川は屋外の気温は0℃以下で、長時間観測はバッテリーの供給を含めて不可能である。
<評価方法>測定は約12時間の連続観測とし、NMEAメッセージタイプのGGAデータを、接続したパソコンにLogファイルとして記録する。PathfinderPocketとGM48は専用ソフトで出力間隔を5秒に設定したが、GPSVは出力データタイプ、時間間隔の設定はできないので、受信機の仕様のままとした。評価はLogファイルの緯度経度を平面直角座標XYに変換し、当社の基準点のXY座標値との差、XY標準偏差、2drmsを受信機ごとに比較する。Trimble社のPathfinderPocketについては、2台同時に使用し、単独測位とDGPS測位の比較を行った。
<測定結果>平均値X | 差DX |
標準偏差 X | 平均値Y | 差DY |
標準偏差 Y | 2DRMS | |
基準値 | -21372.237 | --- | --- | 14974.971 | --- | --- | --- |
Pathfinder Pocket 単独測位 | -21372.337 | -0.186 | 1.86 | 14974.204 | -0.767 | 1.67 | 4.99 |
Pathfinder Pocket +MBX-3DGPS | -21372.412 | -0.175 | 1.67 | 14974.741 | -0.230 | 1.18 | 4.09 |
GARNIN GPS V | -21372.558 | -0.321 | 2.25 | 14974.463 | -0.508 | 2.02 | 6.04 |
Sanjose GM48 | -21372.066 | +0.171 | 2.00 | 14974.954 | -0.017 | 1.46 | 4.96 |
受信機 | 画面表示 | 電源 | 設定 | データ出力間隔 | DGPS |
Pathfinder Pocket | なし | 専用充電池 | 専用ソフト | 専用ソフト | 対応 |
GARNIN GPS V | あり | 単三電池 | 本体で可 | 1秒固定 | 対応 |
Sanjose GM48 | なし | 単三電池/ USB | 専用ソフト | 専用ソフト | 予定 |
各受信機の測定結果と特徴を表に示した。まず単独測位の位置精度に関しては各受信機間で顕著な差は認められない。今回の観測条件は最良に近い条件で行ったが、基準値との差はどの受信機でも1m以内に納まっている。
しかし精度が1メータというわけではない。これはデータ約10000点の平均値であり、個々の測定値については標準偏差の欄に示したようにXYとも2m程度のばらつきがある。
その結果、2drmsとしては約5m、すなわち測定値の95%は“真値”から5m以内という結果である。このクラスの受信機は良好な条件で5m−10m程度の精度という北海熊の認識であるが、今回もその結果を裏付けたと言える。
注目されたPathfinderPocketのディファレンシャル精度であったが、今回の一連の測定結果では、位置精度、2drm値とも最良であった。しかし上位機種であるPathfinderProXRとの差はやはり大きく、価格差応分の性能と言えばそれまでではあるが、劇的なDGPS効果というには訳には行かないようである。
ここからは北海熊の個人的な感想であるが、単独測位としてパソコンやポケットPCに接続するのであれば、GM48が最適のようである。理由は価格が安い、小型、専用ソフトにより出力メッセージタイプの選択、出力間隔も自由に設定可能である。またUSBタイプを選択すれば、パソコンへの接続は電源も不要であるなどが理由である。
GARNIN GPSVは画面表示、キー操作、地図表示などやはりホビー志向の強い製品である。初めてGPSを購入する場合や使用目的が明確でない場合には、必要な時にはパソコンへの出力も可能と考えて選択するというのが良いかと思う。
PathfinderPocketは単独測位だけを使用目的にするには価格も他と比較すると安くないので少し勿体ない。やはりTrimble社のGISシステムのセンサーと位置付け、拡張性を理解した上での導入が望ましい。
DGPSについても、今回のようにリアルタイムビーコンによるDGPS以外に、ビーコンが受信できない地域においては、全国に約1000点存在する電子基準点などを利用した後処理ディファレンシャルに対応できることが特徴である。(別途専用ソフトが必要) この他のハンディーGPS受信機は、今回のテストには加えなかったが、Magellan社のSporTrakなどがある。この受信機も今までのテストからは概ね今回と同程度の性能である。最後にこのクラスのGPS受信機は、機能を除けば価格差ほどの性能差はなさそうである。どの受信機でも同様の精度での測位が可能であるが、GPSの特徴として、精度は衛星の配置状況や受信環境により左右される。従ってビルの谷間、森林内では一般的に今回の結果よりは精度は悪くなると考えるべきである。