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GPSの仕組み

GPSとはどういうものかというのを簡単に説明します。そもそも正しい名称はGNSS(Global Navigation Satellite Systemの略)であって、GPSというのは「アメリカのGNSSの名称」です。スマートフォン全般のことをアイ●ォンと呼ぶようなものですが、日本で一般的に通じる名称はこちらなので、ここでもGPSと呼ぶことにします。

よくある間違いとして、GPS受信機はGPS衛星が発信する位置情報(緯度経度)を受信している、というものがありますが、違います。ではGPS衛星が何を発信しているかというと、ひたすらに現時刻を発信し続けています。

「2023年11月23日15時06分38.286秒!」と発信しているGPS衛星

衛星は、時刻のほかにも大事なデータを発信します。運行予定経路時刻表です。この時刻表はとても細かく決まっているので、2023年11月23日15時06分38.286秒時点に衛星が地球上のどこにいるかもちゃんと記載されています。

さて、この衛星から受信機は時刻を受信した訳ですが、上記の時刻を受信したのは15時06分38.386秒でした。受信機内部の時計は衛星からデータを受け取るのと同時に時刻の補正も実行されますので、コンマ秒単位で正確です。では何故0.1秒ずれているかというと、衛星と受信機の間の距離に応じて時差が出てくるからです。

衛星は時刻情報を含むデータを光の速さで毎時発信しています。光は1秒で約30万km進みますので、0.1秒の時差があるということは、衛星と受信機が約3万km離れているということになります。ここで、運行予定経路と時刻表の出番です。この衛星の2023年11月23日15時06分38.286秒時点の位置から約3万キロ離れた地点が受信機のある位置、ということになります。つまり、こういうことです。

半径3万キロの円

ざっくりが過ぎますね。

では、もうひとつ衛星が加わるとどうなるかというと、こうなります。

重なる2つの円

かなり絞れました。ではさらにもうひとつ加えてみましょう。

重なる3つの円

無事に1点に絞れました。これが「GPSでは最低3機分の衛星のデータが必要」と言われる理由です(厳密には、受信機の時刻補正のためにさらにもう1機必要です)。

ただしこれはデータが理論通りの速度で到達した場合の例であって、現実には湿度や温度、花粉が飛散していたりなどで空気中にいろいろな障害物があり、理論通りの時間ではデータが届いていないことが多いです。上の図のように3機の円が綺麗に1点で重なることはとても稀です。そのため「最低3機、でも衛星数は多ければ多いほどデータの信頼性が高くなる」となります。

さらに、衛星は地球の約2万キロ上空を飛んでいるのですが、下図の通り直上にある衛星よりも地平線近くにある衛星の方が距離は遠くなります。その分データの到達速度に影響を与える空気中をより多く進む、つまり誤差が大きくなるということになります。

同じ「地表から約2万キロ」でも、真上と地平線とでは距離が大きく違います。

「直上近くの衛星のデータの方が精度が高い」と言われる理由が、これです。

では直上近くにたくさん衛星があった方がいいのかというと、その場合はこうなります。

ほとんど重なり合ったたくさんの同心円

さすがにここまでの状態になることはありませんが、「GPS衛星は直上付近に1機、あとはイイ感じにバラけた状態で地平線以外に数機あると最高のバランス」とされています。

直上付近の衛星からのデータか、地平線近くの衛星からのデータかは受信機がそれぞれ正しく把握していて、各衛星から得たデータを総合して導き出された位置データひとつずつに対して、データの信頼度を数値で表示します。それが「DOP」という項目です(HDOPまたはVDOPと記載される場合も有)。このDOPの値は、小さければ小さい数字であるほどデータの信頼性が高いとされています。

モンゴルの大平原などではこのDOPが1以下の値が頻発して感動しますが、日本の森林や山奥などは障害物が多い関係でどうしても4〜6以上の数値も出ます。どのあたりまでの数値を有効なデータとするかは、調査の内容や状況によって違いますので一概には規定できません。