GPSデータは日常の移動や季節の渡り、各々のなわばりの観察に利用されるだけでなく、研究材料としても使用されます。研究における2つの要因(研究期間の長さと、研究内容の緻密さ)が往々にして相反するため、動物の生態や研究内容に合致したGPSスケジュールを設定することは大変重要です。
GPS測位スケジュールを一定間隔にすると、大抵の場合はいろいろな問題が発生します。たとえば長めのインターバルにすると移動の情報サンプル数が足りない、細かい移動パターンを収集できない、といった弊害があり、短めのインターバルだと今度は休憩地(長時間同じ場所で全く動かない)で必要以上に位置データを収集してしまう、必要な情報をまだ充分に収集していないのにバッテリが無くなってしまう、といった弊害が起こってしまいます。
これらの障害を取り除くため、VERTEX Plus首輪にはあらゆるシチュエーションに対応できるプログラムが組み込まれています。
VERTEX Plus首輪にはあらかじめ、想定されるいくつかのシチュエーションが設定されており、ユーザーはそれに対応したスケジュールを設定し自動的に適用されるようプログラムすることができます。首輪の状態がそのシチュエーションに合致しているか、していないかが、スケジュール自動切り替えのトリガーとなります。各トリガーは厳密に優先順位が決められていて、シチュエーションに合わせてバッテリの節約を行ったり、特定の行動パターンを注視できるよう設定することが可能です。
GPS測位スケジュール設定は複数のスケジュールを組み合わせることができ、また特定の日時にのみ適用されるスケジュールを設定することもできます。無線通信オプションが搭載された首輪の場合は更に、リモートで遠隔地からスケジュールを変更させることも可能です。上記のトリガーは全て使用しなくてはならないということはありません。必要なトリガーのみ設定して利用できます。トリガーによっては、イベントの発生を知らせるアラートとしても利用できます。
オオカミには、バッテリ寿命が1〜2年の小さいタイプのバッテリを搭載した首輪しか装着させることができません。しかし彼らの行動パターンは明瞭なため、首輪の計測機能が充分に発揮されます。ここではGPS測位スケジュールに関連する非常にシンプルな例だけを挙げます。ほとんどのトリガーは、通知メッセージとともにGPS測位スケジュールを発生したイベントに合わせて自動的に変更します。
休憩中(標準の測位スケジュール)
オオカミは設定した縄張り内に留まっています。ここではあまり多くの情報を得られないので、首輪はバッテリ節約用の測位スケジュールで動作します(例:3時間に1回測位)。 | |
準備中(アクティビティセンサー用の測位スケジュール)
オオカミは設定した縄張り内で、既定の閾値を超える活動値で行動しています。測位回数を増やすことで(例:30分に1回測位)、どんな小規模な生息地を彼らの利用しているか、何をしているかを観察し、また仮想フェンスへの出入りを感知しやすくするのにも役立ちます。 | |
フィールドへ移動中(仮想フェンス用の測位スケジュール)
オオカミは設定した仮想フェンス内に入ります(または出ます)。測位回数をさらに増やすことで(例:10分に1回測位)彼らがどこへ向かうかを観察し、それが単なる見回りか、または狩りをするのかを見守ります。 | |
狩り中(接近感知センサー用の測位スケジュール)
オオカミがIDタグを装着した被捕食動物に接近し、首輪はそのIDタグからの信号を受信します。測位回数を出来る限り増やすことで(例:8秒に1回測位)彼らの細かい動きや狩りの技術を観察し、狩りの成功を見守ります。 |