GPS測位機能は、GPS首輪を使った多くの研究の中でもコアとなる要素です。GPS測位スケジュールに従って取得されたデータは首輪内部のメモリに保存され、衛星通信(イリジウムやGlobalstar)、無線通信(UHF)、またはUSBケーブルを使った有線接続によってダウンロードすることができます。GPS測位スケジュールは、調査対象の動物の活動傾向や季節ごとの習性(季節による居住地の移動や交配期、狩猟期など)などに合わせて、柔軟にプログラムすることが可能です。またスケジュールは、衛星通信や無線通信を使ってリモートで変更することもできます。取得したデータは、専用のフリーソフトウェアGPS PLUS Xで管理されます。
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アクティビティデータは、野生動物研究におけるもう一つの重要なツールです。首輪内部に組み込まれた加速度センサーで動物の動き(前後左右上下の動作)を計測し、行動パターンや生活リズム、健康状態を把握することができます。
アクティビティセンサーは2015年夏に首輪本体とともにリニューアルし、旧タイプの首輪に比べより多くの機能を備えたセンサーが新たに誕生しました。旧タイプの首輪では内部メモリの保存可能容量の都合により計測したデータから算出された平均値のみ保存されていましたが、新しいアクティビティセンサーでは全てのデータを生データのまま保存することができます。
詳細について、旧タイプのアクティビティセンサーについてはこちらを、2015年夏以降の新しいタイプのアクティビティセンサーについてはこちらをご覧ください。
アクティビティセンサーの基本機能として、ユーザーが設定した一定時間の間に動物が全く動かなかった場合に動作するモータリティ機能があります。モータリティデータは首輪内部のメモリーに記録され、GSMやイリジウム衛星通信を通じてダウンロードすることもできます。また、装着動物の活動量が著しく低い時には、首輪は自動的に冬眠モードに切り替わります。装着動物が活動を再開すると、首輪は再び自動的に通常の動作を開始します。冬眠モード中はGPS位置情報の取得やデータ転送は休止状態になるため、バッテリーの節約になります。
首輪周囲の気温データは、GPS位置情報やアクティビティデータ(アクティビティデータが計測されなかった時には、5分ごとに計測)と共に記録され、それぞれのデータをダウンロードする際に一緒にダウンロードされます。これは、首輪の動作温度の確認に使用できると同時に、気温の変化による動物の反応を観察することにも役立ちます。気温データは、旧タイプの首輪用接続ケーブルLink ManagerやUSBケーブルを使った有線接続か、またはUHF無線接続によりダウンロードすることができます。
VERTEX Plus首輪は、登録された外部センサーの動作を監視し、そのステータス情報を無線で送信することができます。外部センサーはUHF無線を利用して、出産、死亡、体温、違う種類の動物間における行動などのデータを発信します。データは首輪に記録され、USBケーブルを使った有線接続や、UHFターミナルを使った無線通信によりダウンロードすることができます。また首輪にイリジウム衛星通信オプションが適用されている場合、衛星通信経由でステータス情報を発信することもできるため、出産や死亡といった情報をリアルタイムに取得することが可能になります。また、外部センサーの作用によりGPS測位スケジュールを特殊スケジュールに切り替えることもできます。
モータリティ・インプラントはステンレス製の筒状のセンサーで、調査対象の動物の腹腔や胃に埋め込むことで、その動物が死亡した際にすぐにその情報を発信することができます。センサーには気温計と、動物の心拍を測定することもできる高感度加速度計が組み込まれており、UHF無線通信を利用してVERTEX首輪にステータス情報を送信し続けます。
モータリティ・インプラントについての詳細はこちらをご覧ください。
出産検知用インプラントは、妊娠している雌の個体の生殖器に埋め込みUHF無線通信を利用して出産を通知する、小さなチューブ型の発信器です。センサーは、計測した母体の体温や運動状況をVERTEX Plus首輪へ一定間隔で送信し、出産の際には生まれる個体の身体に押し出される形で母体から排出されます。センサーは出産時と、その後母体が出産場所から立ち去った時点のデータもそれぞれ取得します。データは全て母体が装着している首輪に保存され、もし首輪にGSM通信またはイリジウム衛星通信が適用されている場合には出産検知データが衛星通信でリアルタイムに送信されます。
出産検知用インプラントについての詳細はこちらをご覧ください。
UHF IDタグは小さく軽量かつ長期間の使用が可能な、同種間または異種間の関係性を研究することができるセンサーです。UHF IDタグは全てのVERTEX首輪と連携させることができ、また1台の首輪で複数のIDタグを管理させることができます。また、各IDタグはそれぞれ固有のID番号を持ち、各種センサーやVHFビーコン発信機能を搭載することが可能です。センサーで取得したデータはソフトウェアの設定に従って、連携しているVERTEX Plus首輪へとUHF無線通信を利用して送信されます。UHF IDタグの最大通信可能距離は約130メートルですが、信号の出力は必要に応じて調整することもできます。
離別感知センサーは、母子間における行動を研究するために開発されたセンサーですが、その他に群れの中での力関係のモニタリングにも利用できます。1台の首輪に、離別感知センサーを適用したUHF IDタグを最大8つまで登録して連携させることが可能です。首輪はあらかじめ設定されたインターバルで、UHF IDタグからの信号を受信します。IDタグからの信号が1時間受信できなかった時には、首輪はそのIDタグが遠く離れた(離別した)と判断し、離別データとして保存します。また、首輪にGSM通信またはイリジウム衛星通信が適用されている場合には、離別イベントが衛星通信を利用してリアルタイムで送信されます。IDタグから発信される信号には、固有のID番号だけではなく、IDタグを装着している個体の生死に関する情報も含まれます。個体の死亡時には、通信のスケジュールに関わらず自動的に首輪へ死亡情報(モータリティイベント)が送信されます。
子鹿用首輪は、子鹿にUHF IDタグを装着させるために設計された首輪です。首輪は非常に軽く、何層にも重ねた弾力のある素材を絹糸で縫い止めて作られており、摩耗や時間、気候により糸がほどけて、重ねた部分が開いていく仕組みになっています。これにより、子鹿の成長とともに首のサイズが変わっても、首を締め付けることなく装着させ続けることができます。
VERTEX Plusに適用できる接近感知センサーは、他の動物に取り付けたUHFタグにより両者が接触したことが分かるオプションです。半径130メートル圏内でUHFタグを付けた動物がいた場合に作動し、そのタグの固有ID番号とともに日時と距離(信号強度)を記録します。また、首輪にGSM通信またはイリジウム衛星通信が適用されている場合には、接近感知イベントが衛星通信を利用してリアルタイムで送信されます。接近感知センサーが作動すると、自動的にGPS取得スケジュールをあらかじめ設定された接近感知センサー用スケジュールに切り替えることもできます。これにより、捕食動物と被捕食動物の相互の行動や、同種の動物の縄張り争いなどを細かく観察することが可能になります。通信距離は必要に応じて調整することもできます。
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